オルダス・ハクスリー著、黒原敏行訳『すばらしい新世界』を読んで。
この本は光文社古典新訳文庫からでています。
光文社古典新訳文庫は2006年創刊の比較的新しい文庫であり、とにかく訳が現代語でかかれておりとても読みやすいです。
古典アレルギーの人にもおすすめです。
最近、古典を読むのが楽しくなってきました。
1932年に発表されており、ハクスリーが38歳の時の作品です。
発表された年齢も気になるようになりました。
舞台は西暦2540年の未来。
人間は工場生産され、条件つけ教育をされ階級社会になっています。
キリスト教はもうなく、フォード教が主流です。
自動車の大量生産を始めたあのフォードです。
人類の数は完璧に管理されています。
現在の社会問題である
少子化、非婚化、人口問題はありません。
家族や結婚という概念もなくなっており、母親という言葉は卑猥な言葉になっています
感情に起伏も不要という考え方で、心が乱れそうになると「ソーマ」という薬物を飲みます。
例えば恋をして、胸が苦しくなる。
はい、「ソーマ」。
人にばかにされて、怒りそうになれば
はい、「ソーマ」。
とにかく安定こそが絶対という世界です。
人類が理想としてきた社会が到来しています。
戦争・争いはなく、個人間のケンカもありません。
みんな、楽しそうに過ごしています。
老いもなく、若いまま年をとり60歳くらいでぽっくり死にます。
楽しみはフリーセックスと触感映画(VRに触覚や嗅覚が追加されもの)。
しかし、まだ地球上には未開の地があります。
未開の地では子供は母親から生まれ、家族で暮らして、年をとります。(現在の当たり前の姿)
未開地は観光地として人気があります。
そこから、「すばらしい新世界」へやってくるジョンもキーマンの一人です。
人類が理想としている世界なのに、気持ち悪さがあります。
すべての問題が解決された社会は楽しそうではありません。
ほんとに不思議な感覚になります。
表紙にあるように、みんなが一緒で個性はなくなります。
昔のほうが、個性的な人が多かった気がするのは私だけでしょうか。
みんながいい人になってきている社会の行きつく先は…。
いい人になんか気持ち悪さを感じてしまうのは自分の性格が歪んでいるせいなのかな?
なんて思ったりします。
いろいろ考えさせられる古典です。