鈴木七沖さんの「情報断食」という本を読んでいたら
「なぜ村上春樹は世界で読まれるのか」というコラムがありました。
無意識や潜在意識をいったん通過させて、物語を作っているという解説があり
なるほど、そういう見方があるのかと思い急に村上春樹さんの小説を読んでみたくなりました。
内容については詳しくは触れませんが
なぜ村上春樹さんの小説がたくさんの人に読まれているのかを考えてみたいと思います。
村上春樹さんの小説は好き嫌いが分かれると思います。
「意味がわからない」「おもしろくない」という意見も多いかと。
私は読んでいて心地がよくなります。
文字や文章そのものを楽しんでいるという感覚です。
クラシック音楽を聴いているような。時間経過がゆっくりで登場人物が少ないです。
同じようなことの繰り返しがあったり
登場人物はどこか感情が平板です。
訳の分からないことが突然起きても、流されていきます。抵抗をしようとはしません。
ドストエフスキーの「罪と罰」とは対照的です。「罪と罰」はみんな感情的で自己主張がだらけです。
「騎士団長殺し」は起こることをすーっと受け入れていきます。
離婚や不倫、依頼、指図を抵抗することなく受け入れていきます。
どこかストーリーがあるわけではなく、今を生きていたらいつの間にか思ってもみないところにいた、みたいな感じです。
これって、人生そのものにそっくりではないかと思いました。
ストーリーがないからこそ、この次がどうなるのであろうとワクワクするし
小説内で起こる問題が解決しなかったり、いつの間にか解決したり。
物語の伏線の回収もありません。
私たちの人生もとてもそっくりだと思うのです。
小説内で異空間へ迷い込み4日後にいきなり全く違う場所にいるというシーンがあります。
なぜそうなったのか説明ができません。
なぜそうなったのか説明できないことが生きているとたくさんあると思います。
それを上手に表現されているな、と改めて思いました。
顕在意識(目で見え、成果がわかりやすいもの)と潜在意識(目で見えないけど、自分の行動の原理となっているもの)をうまく織り交ぜた小説だと思います。
潜在意識をイデアやメタファーと表現されているのではないかと思います。
人生は思い通りに行かないとはよく言われますが、本当にそうだと思います。
不測の事態はおきるし、問題は解決しないし(だけどいつの間にか消える)。
そんな視点で読んでみると味わい深かったですね。