映画で『バーニング』を観て、その原作が村上春樹の短編『納屋を焼く』であることを知り、手に取ってみました。短編集なので『納屋を焼く』以外に4つの短編があります。
昭和57年から59年に書かれた作品たちであり、村上作品としては初期にあたります。
村上作品の登場人物は、無機質でプラスチック的、感情の起伏が少なく、運命をそのまま受け入れていく、人々が多い気がします。主人公の周囲の人たちは個性的であり、社会にうまく馴染めていません。会話も何か意味深そうなことを言うけど、さほど意味がないようにも思います。
全体的にはそんな世界観で物語が進みます。謎を追いかけて行くのはスリリングだけど、行きついたところは特に意味がない事だった。
時々、この世界観を味わいたくて村上作品を読みます。小人がでてきたり、精神にやや異常をきたした人がでてきたり。特に、評価することなく淡々と物語が進む。意味をわざわざ見いだす作業は疲れる事でもあります。村上作品は、文章をそのまま楽しめる。たいていの主人公の感情が平板化しているので、心がざわつかされる事がない。
盛り上がりもないけど、盛り下がりもない。私は読んでいて気持ちがいいです。いつも読みたいわけではないけど、なぜか周期的に読みたくなります。
きっとその時に自分の感情や精神状態に関係しているのだと思います。
ちょっと失礼な言い方かもしれないけど、濃い料理がつづいたあとのお茶漬けみたいな感じ。
私はそういう風に村上作品を楽しんでいます。
ちょうど一年前にも村上作品を読んでいました。どうも自己啓発本を読んだ後に村上作品を読みたくなるようです。