町山智浩さんは映画評論家らしく、初めて著書を読みました。
田舎教師&都会教師さんのブログで拝見し、読みたくなったんです。
13本の映画を「格差」という目線から厳選し、紹介されています。映画を見る時に目的を持って観るとこんなに見方が変わるのかと新鮮な驚きがありました。
資本主義は人々を豊かにしましたが、格差という悪魔を生み出しました。
公正・公平は素晴らしい概念ですが、例外がなくなり、考えが硬直化し、行き過ぎるとデストピア化します。
貧困や格差、差別は比較的テーマにしやすいかもしれません。
努力や周囲の協力を得て貧困から抜け出す、素敵な王子様に逢うというストーリーは分かりやすく「希望を持つ、世界はそんなに悪くない」というメッセージは分かりやすいです。
しかし、ここに紹介されている13本の作品はそういったメッセージはありません。貧困や格差をそのまま描いており、見終わった後、感動というよりも「う~ん」と考えさせられるタイプの映画です。
「希望を持って生きてきた、努力もしてきた。でも現実社会は冷徹である」というメッセージが込められてると思います。
紹介されている映画のラインナップ。
#1 『パラサイト 半地下の家族』 2020年アカデミー賞 作品賞
#2 『ジョーカー』 2020年アカデミー賞 主演男優賞
#4 『アス』
#5 『ザ・スクエア 思いやりの聖域』
#6 『バーニング 劇場版』
#7 『ザ・ホワイトタイガー』
#8 『ロゼッタ』
#9 『キャシー・カム・ホーム』
#10 『わたしは、ダニエル・ブレイク』
#11 『家族を想うとき』
#13 『天気の子』 2020年日本アカデミー賞
監督のメッセージをうまく受け止めないと「わけのわからない映画だった」「希望のない映画だ」「なにが言いたいの?」と見終わったあとに思ってしまいます。
むしろそう思わせた方が、制作側からは勝ちなのかもしれません。一見わかりにくく、批評がでる内容を作ることで様々な意見がでます。それが映画を深化させていくのだと思うのです。
目を背けたくなるような内容を描くことで、視聴者の心を揺さぶります。
格差・貧困・差別からの成功ストーリーは「受け」はいいでしょう。見終わった後いい気分になりますし、わかりやすいメッセージです。
しかし、格差・貧困、差別からダークサイドへ落ちていく人たちのストーリーというものもありこれらの作品の一部はそういったことを描写しています。
そのため主人公が「成功者」にならず「敗北者」で終わるストーリーというものが出来上がります。ダークサイドに落ちたくて落ちたのではなく、社会から見放され、社会への希望を失い落ちざるを得なかった人々。
絶望側へ落ちた時に、人はどうふるまうか。
語る側はいつも、成功者や社会的地位がそれなりにある側です。
貧困状態にあるひとが貧困を書くことは難しいのかもしれません。それどころではないから。
ある程度、貧困を描く余裕ができた人々がその現実を描く必要があるのかもしれません。日常生活で、貧困・格差・差別は目を背けたい現実で知らなくてもいいのかもしれません。日常生活と自分の事で毎日いっぱいいっぱいですし。
しかし、ふと流れを止めて観たくない現実を観るという作業も必要なのかもしれません。あまり見すぎると現実への希望を失ってしまいそうなので、時々見るのがいいかもしれませんね。
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