5冊目は三島由紀夫の「憂国」です。30ページほどの短い小説です。
舞台は1936年、2・26事件から3日後です。2・26事件を起こした青年将校と同僚の青年中尉とその妻の物語。青年中尉は新婚を理由に、事件に誘われませんでした。ラジオで知るのです。青年将校達を処分する立場になりますが、そんなことはできないと割腹自殺を行います。そして妻も後追い自殺。
ストーリーは単純です。中尉やその妻の内面の描写があるわけではありません。外から割腹自殺までの成り行きをじーと見ているという感覚です。
到底内容も現代の感覚からは共感を得られるものではなく、下手するとPTSD(心的外傷後ストレス)になるかもしれませんので閲覧注意です。
そして、そのシーンが強烈に頭に焼き付きます。不思議です。
三島由紀夫の作品に「不道徳教育講座」というものがあり、こちらはゲラゲラ笑えます。このギャップは何なのでしょう。不思議な魅力がある作家です。