5冊目は角幡唯介さんの「極夜行」です。
角幡さんは日本では数少ない探検家です。それもそのはず。世界には地理的に探検できる場所はほぼなくなっているからです。グーグルアースとGPSで自分の位置がわかります。
角幡さんは探検の定義を再構築します。地理的未知はなくなったけど、精神的未知はあるのではないか。
角幡さんはGPSを持たずに、北極圏のグリーンランドを六分儀だけを持って旅します。4か月太陽が昇らない極夜という環境です。4か月後に太陽を見たら人はどのような感情になるのか、というのが本書の主題です。
出発から数日で、六分儀がブリザードで飛ばされ行方不明になります。
それからは地図と星を頼りに旅を続けます。
極夜なので景色はありません。満天の空と過去の記憶と現在の心境しか、ありません。
それをうまくつなぎ合わせて、文章を構成します。
歴史的事実を織り交ぜながらストーリーが展開するので、角幡さんがどういった歴史的な文脈のなかで極夜を旅しているのかがわかります。
写真は全くありません。文字だけの表現で、読者の心に強烈な印象を残します。
文学作品のような、品もあります。
時代を経たら古典になるのではないかと思います。