98冊目は遠藤周作さんの「王妃マリー・アントワネット」です。
何冊か遠藤周作さんの作品を読んで感じたことは
1.文体が読みやすい
2.心理描写がうまい
3.歴史的事実とフィクションを織り交ぜ、楽しみながら歴史を学ぶ事ができる
4.小説の題材がニッチである。
5.内容になんらかの闘争が描かれている
などです。
今回のマリー・アントワネットも誰でも知っている名前であるが
その生涯やなぜギロチンにかけられたのかを知る人は少ないと思います。
私の知識では
贅沢を尽くしてフランスの経済を疲弊させ国民が怒ってギロチンにかけられた王妃という程度です。
約200年ほど続いたブルボン朝最後の王様ルイ16世の王妃です。
オーストリア帝国の女帝マリア・テレジアの娘として生まれたマリー・アントワネット
フランスとオーストリアの政略結婚として王妃としてフランスに迎えられます。
華々しく、苦労を知らず、生まれてからギロチンにかけられるまで常に頂点に君臨した王妃。
自分よりも身分の高いものは、誰一人としていない
ルイ16世は対照的に愚鈍で、ものごとを決められない王様として描写されています。
狩りと鍛冶が好きで、政治には興味なし。
人との交流を楽しむタイプではなく、女性にも興味を示しません。
お金を使う事もありません。
主義主張がないのでマリー・アントワネットの言いなりになります。
今なら釣りと、もの作りが好きな、ちょっと引きこもりがちの青年。
心はとても優しいです。
最後フランス革命の代名詞ともなっているギロチンにかけられます。
39歳の時です。ほぼ私と同年齢。
やさしく、妻を愛し、子供を愛したルイ16世が処刑させる場面で
泣いてしまいました。
マリー・アントワネットも37歳でギロチンにかけられます。
なんども逃亡を考えますがことごとく失敗します。
最後、子供と引き離される場面は王妃でもなく女帝でもなく
母でした。
かわいそうでした。
人物描写がうまく
マリー・アントワネットの視点からのフランス革命
を考える事ができます。
当時フランスという国が限界にきていたのも事実ですし
なぜ、限界になったのかも所どころの民衆の会話でもわかります。
アメリカ独立戦争に加担し戦費がかさんだのがとどめです。
戦争で国が傾いたのです。
インフレと物資不足が民衆を襲います。
マリーアントワネットに恨みを抱く娼婦マルグリット
革命には賛成するが、暴力や処刑などやり方に疑問を抱くアニエス
変な性癖をもったサド侯爵
マリーアントワネットを一図に愛するスウェーデンのフェニアス
大詐欺師カリオストロ
一人一人人物が雑に扱われず、有機的に物語に絡んでいます。
こんなに面白い本を見つけれた事に感謝です。