ケン・リュウさんの「紙の動物園」です。
読書の幅を広げるために、ファンタジー小説を読みたいと思い手に取りました。
中国人作家の作品は読んだことがありませんでした。
7つの短編集であり、「紙の動物園」はその一つです。
折り紙の動物が「動く」というところがファンタジー要素です。
主人公は「ぼく」です。
「ぼく」が悲しんでいるとお母さんが折り紙を折ってくれます。
お母さんはお父さんに「買われて」結婚しました。
学校ではいじめにあいます。
思春期になり、お母さんにつらく当たります。
母につらく当たっていた「ぼく」がお母さんとお父さんの結婚の秘密を
折り紙を通して知っていきます。
なぜ、お母さんは中国で売られアメリカに行かなくてはならなかったのか。
なぜ、中国を脱出しないといけなかったのか。
政治的なメッセージを感じます。
直接には中国共産党を批判できないのだと思いますが、小説という形で暗に私たちに中国の実態を教えてくれます。
人権というものがなく、人が売られるという事はなにも中国に限った事ではありません。
アメリカも奴隷制を過去に持っており、人の売買が行われていました。
「紙の動物園」には、人権問題を批判しながらもファンタジー要素を入れることでとてもマイルドな批判になっています。
紙の動物が動くという設定が、親の愛情を感じます。
気持ちや魂が入っているわけです。
おもちゃがないという貧しさが強調されます。
ほかにも6つの短編があり、どれも独特な世界を描いています。
現実をちょっと忘れたいときにはいいですね。
今まで「魔法」とか、「おもちゃが動く」といったファンタジーは興味がありませんでしたが、今後は挑戦していこうと思います。
読書世界が広がっていくと、また日常が楽しくなってきます。