こんな名著を見逃していたなんて、13年間損した!と思いました。2009年に発行されており、2021年で40刷になっています。めちゃくちゃ読まれている…。脳は変化する。精神的苦痛も脳のネットワーク異常で起こる。だから、治療が可能というのは希望があります。
ちゅり男さんのブログで知りました。
私も臨床医の端くれで、東洋医学が専門ということもあり、不眠・うつ・不安・認知症の方を数多く見ています。
(内科系)医者の癖として「すぐ投薬をしたくなる問題」があります。
私も御多分にもれず、投薬で患者さんの症状を改善しようと常に考えています。
本書を読んで「運動を処方する」という武器を手に入れました。
医者は処方するときに、科学的知見を大変重視します。
科学的知見というのは「対象者と非対象者で統計的な有意差があるかどうか」という事や「生化学的なマーカーに差が出るか」ということです。
これがないと「ただのあなたの思い込みですよね byひろゆき」になってしまいます。
著者のジョンJレイティさんはハーバード大学臨床精神医学の准教授です。まず権威としては申し分なし。若き日に運動で様々な精神症状が改善することを発見しますが、学会からは認められません(パイオニア達によくあるパターン)。地道に論文発表と研究、臨床を行なっていきます。ほかの学会からも「運動っていいんじゃねぇ」という同志達が増え徐々に運動ムーブメントが起きていきます。
現在イギリスではうつ病患者への処方の第一歩は「運動」らしいです。
少年ジャンプ的に実績と仲間を増やしていきます。
ルフィや悟空のように、敵をボッコボコにはしません。
過去の権威(投薬派)を否定はせず、パイセン達(学会の重鎮)は敬いながら臨床的データを集めていく。
これ大切なんだろうなぁって思いました。
運動で具体的に脳の中で何が起きているのか?生化学的マーカーやfMRI、PET、心理学的スケールを用いて解説していきます。
ちなみにここでいう運動は主にジョギングのような有酸素運動です。
まず驚いたのは運動をすることで神経細胞が新生するという事です。驚くべき発見です。神経細胞は新生し、あらたな神経ネットワークを作り替えていきます。脳の物理的な形や量も変化するのです!
神経ネットワークが変化するということは過去の記憶や未来への考え方が変わるということです。
今が苦しい人は、いつまでもその状態が続かないという事なのです。変化させればよいのです。
Amazing!!
なぜ、その時は苦しくても、あとになってみると「あの時の経験が生きた!」と感じれるのか。それを科学的に説明ができるようになったのです。
興奮が止まりません。
うつ病だけではなく、不安障害や認知症、ADHD、依存症、加齢についても詳しく脳内変化と運動による治療方法が書いてあります。具体的な時間や量も書いてあります。
昔から食事・運動・睡眠が大切を言われます。神経細胞目線で考えると
食事で神経細胞への栄養を補い
運動で神経細胞を増やし
睡眠で神経細胞ネットワークの再構築と記憶の強化を行う。
仮に運動することで健康寿命が0.5日延びるとします(運動機能・認知機能)。1年間運動をすると約6か月の健康寿命が延びます。おまけに、気分がいい日数も増える。福利がかかるので、健康は加速します。
最高のアンチエイジングであり、しかも無料。こんな夢のような商品があるでしょうか?
個人は常に進化し続けるし、違う自分になれるという事を科学的に証明してくれた一冊。
もっと早く出会えればよかった!!
【その他おすすめ書籍】
有酸素運動ではなく、無酸素運動の王道の筋トレ。今や現代の古典となっているテストステロンさんの名著。