一条次郎さんの「レプリカたちの夜」を読んで。
新潮ミステリー大賞を受賞した作品です。
ジャンル分けが難しいなと感じました。
ミステリー要素あり、ファンタジー要素あり、サイコ要素あり、
哲学・心理学要素あり。
新しい雰囲気の小説です。
きっと読者の感想は幅広く、好き嫌いも分かれるかもしれません。
私の第一印象は「悪ふざけをしているな」というものでした。
小説を書く事自体を楽しんでいるように感じます。
デビュー作ですが、肩の力が抜けてます。
型にはまらず、自由自在に文章を楽しんでいる。
切羽詰まったものを感じません。
「謎解き」の要素はちゃんと残してあります。
しかし、ちゃんとその「解答」が用意されているかどうかはわかりません。
伏線の回収はありません。散らかりまくりです。
私はこういったジャンルの小説は読んだことがなかったので新鮮でした。
所々に出てくる、心理学的考察や哲学的考察、動物学的な指摘は
全体ではなく部分を楽しむことができます。
真面目とおふざけが目まぐるしく変わり、まじめに読もうとしてはいけない気がします。
純粋に文章を楽しむという読み方がいいですね。
エンターテインメント小説というのがしっくりくるような感じです。
筒井康隆さんの「霊長類 南へ」がちょっと雰囲気が近いのかなと思います。