漢方医の日記

平凡な毎日をいかに楽しく過ごすか。本の紹介を中心に、学び・健康・東洋医学・ライフスタイルなど色々。漢方大好きおじさんのブログ。

斜陽 太宰治

太宰治の「斜陽」を読んで。

斜陽 (新潮文庫)

斜陽 (新潮文庫)

 

太宰治の作品は暗いものが多いですが、なぜか引き込まれます。

「ネガティブなものに注目する」という心理に合致しているせいかもしれません。

明るい、幸せそうなものばかり見せられても、自分は幸せな気分になりません。

 

映画でも、小説でもその中に、「暗さ」や「ネガティブ」なものがあることで

作品に興味を持てます。

 

斜陽もタイトル通り、ハッピーエンドでは終わりません。

 

貴族であった母。世間を知らず、頭の中はお花畑です。

庭で勝手におしっこをしてしまったりします。

人を疑うこともせず、自己主張もしません。

自分の家で火事が起きても、他人事です。

結核にかかり、衰弱し亡くなりますが、特に不平不満、苦痛を訴えることなく

すっとなくなります。 それは美しい死に方でした。

 

その子供のかず子。30歳でバツイチ。母大好きです。

やんちゃな上原という芸術家と酒を飲みに行き

帰り際にキスをされます。

それで恋に落ち、恋文ストーカーになりますが、上原にはガン無視されます。

 

かず子の弟、直治は麻薬中毒、アルコール依存、借金体質とダメ人間の典型です。

遺書を残して死にます。

貴族のプライドを捨てきれず、一般人とうまく付き合うことができません。

酒や麻薬に逃げますが、当たり前ですが救われません。

きっと、うつになっていったのではないかと思います。

飲酒は一瞬陽気になりますが、そのあとは抑うつになります。

適正飲酒は難しいです。

 

直治の友人、上原。かず子とも関係をもち、子を宿します。妻子もありますが不倫し放題で飲み歩いています。

適当に、作品を作っているという独白もあります。

生活のためでプライドはありません。

 

主人公は、かず子になると思います。

かず子目線で、話は進みます。

最終的にはかず子は上原の子供を宿し、シングルマザーの道を進みます。

上原はの事はどうでもよくなりますが、その遺伝子は欲しかったといいます。

 

かず子にはない能力(世渡り上手、プライドを捨てた生活力)を子供に宿したいという

女性の本能のようなものを感じます。

 

太宰作品は女性が強く、男が弱い(特にメンタル)という構図が多いようなきがします。

 

太宰治の「人間失格」や夏目漱石の「こころ」にも少し通じるところがあるような気がします。

 

自殺文学を読むことで、心が救われるということがあるような気がします。

自分の心の中にあるモヤモヤを言語化してもらったような感覚があり、

そこを支点に、自分の人生を見つめなおすことができるような気がするからです。

 

だから時々 太宰治を読みたくなるのかもしれません。