遠藤周作さんは自信がキリスト教徒であり、キリスト教関連の著書が多数あります。
キリスト教がなぜ、どうしてできたのかを勉強できる本です。
しかし、この本はイエス個人の生涯に焦点を当てています。
この世界はキリスト教ときっても切り離せないのに、何も知りませんでした。
小説家ならではの、想像力と人物描写で引き込まれました。
小説家のすごいところは、人物描写にあると思います。
ある人物が何を考えて、なぜそのように行動するのかを問いをたてながら描写していきます。
歴史書や叙事詩、論文では出来事のみしか記載されず感情は排除されています。
小説では人物が躍動します。もちろん想像でしか書けませんが、歴史的資料をベースにしているので、とても勉強になります。
イエスはユダヤ人でしたが、ユダヤ教の教えを守っていないとの理由で処刑されます。
もともとお金持ちであったわけでもなく、大工の息子でした。
しかし、貧しい人や病気の人、誰からも見捨てられた人に寄り添い様々な奇跡を起こしたといわれています。
寄り添う事を「愛」と表現し、弟子に裏切られて処刑されるときも恨みを言わず、弟子を許してあげてほしいと「まさか」の事を口にします。
そして弟子はイエスの本当に伝えたいことを感じとり、キリスト教が生まれます。
人間であれば裏切った人に恨みつらみを言いたくなるものです。
イエスはそれを言わず、死ぬ間際まで人を信じていました。
私はイエスが好きになりました。キリスト教の教義にはいろいろ書いてありますがのちの人が考えたのだと思います。
イエスが言いたいことはただひとつ「愛」なのだと腑に落ちて理解できました。
ただ、それを実行することは大変難しくて、自分にはできないだろうなと思います。
ただ、理想像を示したという功績は大きいと思います。