漢方医の日記

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医療現場の行動経済学

67冊目は 大竹文雄さん、平井啓さんの「医療現場の行動経済学」です。

 

医療現場の行動経済学: すれ違う医者と患者

医療現場の行動経済学: すれ違う医者と患者

 

 

行動経済学というのは、人間がある選択をする時にどういう心理で選択するのかという事です。

 

例えばAという商品を買う時に、なぜBではなくAを選んだのかという事を考えます。

経済学の分野で発達したので行動経済学と呼ばれるのでしょう。

 

どちらかというと心理学に近いと思います。

 

どういう人間心理が働きAという商品を買うのか。

 

これを医療現場におきかえて説明をしています。

 

例えばAという治療を選ぶときに、なぜBではなくAを選んだのか、というふうに。

 

なぜこのような疑問がわくのかというと、医療現場では患者さんは

医学的には意味のないことや不利益になることを選択することがあります。

 

こちらが説明しても意見は変わりません。

 

残された時間が少ないのに、体をぼろぼろにしてまで治療(実際には治らない)をしようとするのか?

 

なぜ合理的ではない意思決定をしてしまうのか?

 

行動経済学の用語で説明が可能であるということです。

 

例えば

① サンクスコストバイアス

② 現状維持バイアス

③ 現在バイアス

④ 利用可能性ヒューリスティック などです。

 

①はせっかくここまでやったのだから続けたいという心理です。

例えばつまらない映画でも、半分見たから最後まで見ようとうすることです。

合理的判断は「映画館を出る」です。

 

②は現在の状態を変える事は損失であると思ってしまう心理です。

例えば給料の安い仕事でも、転職せずそのままずるずると続けてしまうことです。

給料が上がる事を期待するエネルギーよりも、給料が下がる事を避けようとするエネルギーが強いために転職をしないという判断をして今います。

 

③は簡単に今は決めたくないという心理です。

合理的には今日決めても、明日決めても同じことを今日は決めないという事です。

明日になれば明日が今日になるのでまた決めないという事です。

例えばメールの返信を今日やっても明日やっても一緒なのに、「明日でいいや」となってしまうことです。

 

④は身近な情報に左右されやすいという心理です。

健康情報番組でよくみられる現象です。

医学的に正しいかどうかではなく、テレビでみた情報を正しいと思い込んでしまうことです。

医学的に正しいかどうかではなく、友人が言っていたことを正しいと思い込んでしまうことです。

 

このような心理を理解しながら、医療者はどう患者さんと接すればいいかということを詳しく説明しています。

 

人間は感情の生き物です。そこを理解すれば、日々の診療がまた面白くなると思いました。