34冊目は小田実著、講談社文庫著、「何でも見てやろう」です。
沢木耕太郎さんの「深夜特急」にこの本に刺激を受けたとあり、是非読んでみたいと思いました。
小田さんは1958年にフルブライト留学生という立場でアメリカにタダで1年間留学します。
帰国となった段階で、航空会社のストップオーバーという仕組みを使い、ヨーロッパからアジアまで貧乏旅行をします。
ストップオーバーは途中下車という意味で同一航空券で1年間どこでも行けるらしいです。現在の世界一周航空券です。
1日1ドルで過ごします。
1958年は固定相場制の時代なので360円です。かけそば一杯が25円です。
著作の中に オランダのホステルが150円であったとあります。
文章は軽快で、440ページで文字も小さいですがあっという間に読めました。
黒人差別が当たり前にあるアメリカ、豊かな北欧、貧乏国のギリシアやエジプト、皇帝のいるイラン、大貧乏国インドなどを旅する。
日本ももれなく貧乏国で敗戦国。しかしアラブやアジアの国民から見たらそんな小国がイギリス・アメリカなど大国と戦った事を褒めている。ほかの小国に希望を与えている。 そんな時代背景だ。
印象に残ったシーンがある。エジプトで出会ったドイツ人との話だ。彼らは長年無銭旅行をしているが、しだいに精神的にも肉体的にも荒廃していき1日なにもしないでぼーとするようになる。
それを見ていて小田さんは危機感を感じる。自分も同じになってきているのではないか。
沢木さんの「深夜特急」にも同様のシーンがあった。インドでであったフランス人だ。
貧乏旅行の古典だと思う。こうして世界旅行に憧れた人たちの魂は繋がっていくのだと感じた一冊でした。