漢方医の日記

平凡な毎日をいかに楽しく過ごすか。本の紹介を中心に、学び・健康・東洋医学・ライフスタイルなど色々。漢方大好きおじさんのブログ。

ユートピア

12冊目は湊かなえさんの「ユートピア」です。帯に善意は悪意よりも怖いとあり思わず手に取ってしまいました。

 

ユートピア (集英社文庫)

ユートピア (集英社文庫)

 

 

人口7000人の海辺の港町を舞台にした、心理ミステリーです。主に30代前半の複数の女性を中心に物語が進みます。

 

普通の小説であれば、主人公がいてその人物に感情移入して読み進めるというパターンが多いように思います。しかし、この小説は主に3人の女性目線で書かれておりそれぞれが同程度の重要人物です。サブキャラではないのです。

 

A・B・Cと登場人物がでてきますがAからみたB、CからみたBではBのキャラが変わります。そこが面白い。人間は自分中心で考えているということがよくわかります。絶対的な自分はなく相手あっての自分なんだと改めて考えさせられます。

 

良くも悪くも、付き合う相手は自分にメリットがあるから関係を持ちます。自分の夢をかなえるために必要であったり、精神的な支えとなるから一緒にいたり。そこが破綻していくプロセスも描写されています。

 

同じ言葉をかけられても、その時の自分の心情と都合で相手に嫌悪感をいだくか好意をいだくかも変わります。

 

3人の女性以外にも子供が2人でてきますが、基本的に大人は子供をなめています。守らなくてはならない存在、導いてあげないといけない存在と。しかし、最後に子供目線での最終章があり、すべてが明かされます。子供も思っています。かわいそうな大人をまもってあげないと、自分たちがしっかりしないと、と。

 

目線が目まぐるしく変わる小説でした。