8冊目は吉村昭さんの「漂流」です。
高橋大輔さんの「漂流の島」の中に出てきた小説で、是非読んでみたいと思い購入しました。本の中にヒントをもらい、次の本を選らぶというのも楽しみ方です。
土佐の長平が1785年に漂流します。鳥島という東京から600㎞ほど南に離れた島に仲間3人と漂着し、3人とも全員死亡します。長平は一人、鳥島に残され12年後にその後漂着した仲間(大阪船・鹿児島船)とともに脱出します。これは史実であり、江戸時代の調書が残っています。調書なので、事実のみが記載されておりどのような心情で島で12年間過ごしたのかはわかりません。
12年間、心を強く持ち続けることができたのか。死亡した仲間と生き残った仲間との違いは何であったのか。吉村さんの目線で解釈していきます。
神仏への祈りや希望を捨てないこと、仲間への信頼や計画性など現代社会を生き抜く事とさほど変わらない事をやっています。
同じものばかり食べ栄養失調になり死亡するもの、希望を失いうつ状態となり死亡するもの、未来へ絶望し、過去の栄光を胸に秘めたまま自殺するもの、運動不足・日照不足となり死亡するものなど、現代病にも通じます。
特に絶望的になったときに神仏に祈る事で何度となく乗り切っています。祈ることで気持ちが落ち着き、前向きになるのです。 なぜ、人は祈るのかという事が少し見えたような気がしました。
このような史実があったことを知らなかった事に衝撃を受けました。日本人がイギリスの「ロビンソンクルーソー」は知っているのに日本の「土佐の長平」は知らない。どちらも小説になることで、広く知られるようになりました。今後、「土佐の長平」が子供向けの物語になればもっと広く知られるのではないかと思います。
生き抜くヒントが盛りだくさんです。